オカルトb型肝炎ウイルス感染と化学療法の関係

HBs抗原は、b型肝炎ウイルスに感染していることを示す血清マーカーです。HBs抗原が陰性であれば感染していないと判断されますが、陰性でありながらウイルス遺伝子が血液や肝組織から検出されることがあります。

こうした病態をオカルトb型肝炎ウイルスと呼びますが、ここでは、関係性の深い化学療法とともに紹介します。


血清メーカーとウイルス感染

b型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、血液検査で調べることができます。b型肝炎ウイルスキャリアは、HBs抗原陽性、すでに感染している人ならHBs抗原陰性で、HBc抗体陽性かつ、HBs抗体陽性となります。

また、HBs抗原が陰性を示しているにもかかわらず、血液や肝細胞の組織内のウイルスの状態が陽性の人は、オカルトb型肝炎ウイルスに感染しているということです。HBc抗体とHBs抗体の両方が陽性またはどちらか一方が陽性のパターンと、HBc抗体とHBs抗体の両方が陰性または、どちらか片方が陰性のパターンがあります。

これは、抗がん剤による化学療法などが要因です。オカルトb型肝炎ウイルスから、重篤なb型肝炎を発症することもあるため注意が必要です。

デノボb型肝炎とは

b型肝炎ウイルスキャリアの人で、さまざまな工夫をして、ウイルス量を陰性化し、HBe抗原も陰性、HBc抗体陽性、肝機能も正常という状態になっても、ウイルスを完全に排除することは困難であることがわかっています。

b型肝炎ウイルスは、DNAウイルスのため、肝細胞の核の中に含まれていることから、本来は正常なDNAにひそかに組み込まれることがあるのです。そのため、c型肝炎のように、遺伝子の中には残らないRNAウイルスとは違って、完全排除は難しくなります。

ウイルス量が検知されない程度のレベルまで抑え込むことができれば、ほとんどケースで進行はストップするため、肝硬変や肝がんのリスクが大きく下がります。しかし、理想的な状態を継続している人でも、抗がん剤の治療などの化学療法により、ウイルスが再活性化するケースがあるのです。

こうした薬剤は、全身的な免疫機能に揺さぶりをかけるので、眠っていたはずのウイルスが寝た子が起きたように騒ぎ出してしまいます。オカルトb型肝炎ウイルス感染者が、化学治療後にウイルスを再活性化させ起こした肝炎は、デノボb型肝炎と呼ばれています。

劇症化しやすいので注意

b型肝炎ウイルスが再活性化するリスクは、オカルトb型肝炎ウイルス感染者よりも、HBs抗原陽性者のほうが高いです。

しかし、オカルトb型肝炎ウイルス感染者でも、悪性リンパ腫などに対してリツキシマブ、フルダラビンによる化学療法などは、非常に再活性化のリスクが高い治療法のため、慎重な対応が必要になります。

オカルトb型肝炎ウイルス感染者が、化学療法により、b型肝炎を重症化させるケースの多くは、化学療法後に肝炎を発症します。

それに先行して、ウイルス量が増加し、HBs抗原が陽性化してから、肝炎が発症するまでの期間は12週から40週で平均値は、33.5週です。

加えて、ウイルス量が陽性化してから肝炎を発症するまでの期間は、12週から28週で、平均値は18.5週になります。そして、急性肝炎の中でも特に重症で、急激に高度の肝機能障害が出現する肝炎を劇症肝炎と言いますが、デノボb型肝炎の場合、通常のb型肝炎と比べると、劇症化率が非常に高いだけでなく、その後の死亡率も高いため注意が必要です。


発症させないための対策

ウイルスの再活性化による劇症化を防ぐためには、がん治療などの化学療法などを行う場合には、b型肝炎ウイルスキャリアか既往感染者であるかを血液検査で明らかにします。再活性化のリスクが高い人は、慢性活動性肝炎、非活動性キャリアの順になりますが、HBs抗体が陽性になり、HBc抗原とHBs抗原が陰性となって治癒と診断されたオカルトb型肝炎ウイルス感染者は、既往感染者でもいるので、それを確認していきます。

b型肝炎ウイルスキャリアの人が化学療法を行う場合は、大前提として、肝臓専門医と相談をしながら治療を進めていくことが重要です。主に核酸アナログ製剤の服用をスタートし、化学療法を受ける前に、できるだけウイルス量を減らしていきます。

また、オカルトb型肝炎ウイルス感染者の場合は、ウイルス量が陽性となった時点で、核酸アナログ製剤の投与をスタートさせることが多いです。それにより、事前に肝炎を発症するのを予防します。核酸アナログ製剤は、エンテカビル以降に登場した新薬を利用することが多く、投与中は、原則として1か月から3か月に1回、ウイルス量の定量検査が行われます。

ただし、核酸アナログ製剤は、ウイルス量が陰性化するまでの限定的な使用になることがほとんどなので、薬価が気になるようであれば、ラミブジンなどの核酸アナログ製剤も選択肢とすることも可能です。

ゼフィックスを使用したb型肝炎治療

投与はいつまで続くのか

HBs抗原が陽性のb型肝炎ウイルスキャリアの場合、慢性のb型肝炎における核酸アナログ製剤の投与終了後に基準を満たせば、投与を終了することができます。しかし、近年では、安全に核酸アナログ製剤を終了し、その後のウイルス量の増加を防ぐために、シークエンシャル療法といって、核酸アナログ製剤とインターフェロン療法を連続して行う治療法が取り入れられていることが多いです。

一方で、オカルトb型肝炎ウイルス感染者の場合、HBc抗体とHBs抗体が陽性の場合には、最低でも12か月間は投与を続ける必要があります。この継続期間中に、肝機能の状態を把握できるALTというアミノ酸の代謝にかかわっている酵素の数値が正常化し、ウイルス量に関しても持続して検知感度以下、陰性を示しているときに投与を終了することが可能です。

さらに、どちらのケースにおいても、投与終了後12か月間は、厳重な経過観察が必要です。仮にウイルス定量検査によって、検出感度以上になりウイルス量が陽性となった場合には、投与を即再開することになります。いずれにしても、がん治療との兼ね合いもありますので、できれば同じ病院内に肝臓専門医とがん治療の担当医がいることが望ましくなります。

そうでないケースでも、きちんと連携のとれる病院を選択することが大事です。